田子の浦ゆうち出でて見れば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける
万葉集:山部赤人(巻三ー0318)
あっという間に富士は雲の中
山部宿祢赤人望不尽山歌一首 并短歌
天地之 分時従 神左備手 高貴寸 駿河有 布士能高嶺乎
天原 振放見者 度日之 陰毛隠比 照月乃 光毛不見 白雲母 伊去波伐加利
時自久曽 雪者落家留 語告 言継将往 不尽能高嶺者
田兒之浦従打出而見者真白衣
不尽能高嶺尓雪波零家留
【読み下し文】
山部宿禰赤人 富士山を望む歌一首 短歌を并せたり
天地の 分れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を
天の原 降りさけ見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い去きはばかり
時じくぞ 雪は降りける 語りつぎ 言ひ継ぎ往かむ 富士の高嶺は
田子の浦ゆ うち出てみれば ま白にぞ
富士の高嶺に 雪は降りける
【大意】
天と地が分かれた時から、神々しく、高く貴い、駿河にある富士の高嶺を、大空高く仰ぎ見ると、その高さに遮られて、空を渡る日の光も隠れ、照る月の光も見えず、白雲も行きためらい、季節の区別なく、いつも雪は降っていることよ。
この富士の高嶺の高く貴い姿を、後の世の人々にも、まだ見ぬ人々にも、いつまでも語りつぎ、言い継いでいこう。
(反歌)
田子の浦を通って、広々とした所に出て見ると、真っ白に富士の高嶺に雪が降り積もっていることだ。
以前北斎展を見に行った時購入した311頁の分厚い本